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オートローテーション
エンジン故障などにより動力を失ったヘリコプターは、専門でない人間からすると即座に墜落する様に想像されがちである。 しかしながら、竹トンボがゆっくりと地面に着地するように、カエデの種子が風を受けてクルクルと回転しながら舞い降りるように、 オートローテーションという、動力を失ってもなおヘリコプターには安全に着陸する方法が備わっているのである。
オートローテーションとは、降下する事により空気からエネルギーをもらい推力を発生させる飛行であり、エンジンからの動力の供給はなく、メインローターは空気力のみで回され、これによってテールローター、補機なども駆動されている状態をいう。 ヘリコプターはこのオートローテーションにより、すべてのエンジンが停止しても安全に着陸する事が可能である。
また、オートローテーションはヘリコプター操縦に必須の技術であり、ヘリコプターパイロットは必ずその訓練を受けている。 ヘリコプター技能試験においても試験要領に含まれており、ある一定の高度から、地上の規定の広さの中へ安全に模擬着陸ができることが要求されている項目である。
操縦操作
全エンジンが故障した場合には、ローターを駆動するエネルギーがなくなるので、CPをそのままに保持していると、メインローターの回転数が急激に低下し、ブレードが失速して揚力を失う。 このような回転数の低下を防ぐため直ちにCPをフルダウンにすると共に、右ペダルを踏み込んで(メインローターが上方からみて反時計方向回転の場合)機首方向を維持し、次いでサイクリック(操縦桿)を操作し、希望する前進速度を得る。 なお、ローターの回転数はオートローテーション時の常用最大と最小値の間になるように、CPを操作(アップ:回転数減、ダウン:回転数増)し、限界値を超えないようにする。 また、以下に述べる、高度と速度によるオートローテーションの制限も存在するので、パイロットは常にこれらの事を念頭に置いて操縦する事が求められる。

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飛行回避領域
高度-速度包囲線図
Height-Velocity-Envelope と呼ばれているもので、エンジンが故障しエンジンの出力によるローターの回転力を失った場合、ヘリコプターはオートローテーションを行って、適度の沈下率及び前進速度を保って安全に着陸するのであるが、エンジン故障時からオートローテーションに移行するにはある程度時間がかかり、また、その間、高度も低下する。 このため速度が低い場合は高度の制限、高度が低い場合は速度の制限が設けられる。 この制限内ではオートローテーションに入ろうとしても、適度の沈下率、及び前進速度を保つ事ができず、地面に安全に着陸することができない。 高速度低高度の場合、エンジン故障の際に前進速度を充分減速する余裕がなく、高速のまま接地する事となる。 双発エンジンの機体では、片発故障時に対してH-V線図(高度-速度包囲線図)が規定されているが、制限範囲は小さくなる。 また、機種によっては機体重量が軽い時には制限範囲がなくなる場合もある。 別名でデッドマンズカーブという呼称もあるがデッドが死を意味する事から、現在はH-V線図と表記されることが多くなっている。

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飛行速度の限界
前進飛行時
ブレードの対気速度は回転方位によって異なり、特に前進方位と後退方位ではその差が大きい。 ブレードの迎え角が同じであれば、揚力は速度の2乗に比例するので、左右のアンバランスが生じる。 従って、前進方位にきた時には迎え角を小さくし、後退方位にきた時には迎え角を大きくしてバランスをとる必要がある。 これはブレードに周期的なピッチ変化(縦のサイクリックピッチ)を与えることによって行う。
限界速度付近
さらに速度が増加すると、後退側ではますます対気速度が減少し、かつ逆流領域も増加するので迎え角をより大きくする必要があるが、迎え角が失速角に達するとそれ以上は揚力を増加させることはできなくなる。 一方前進側では前進速度と共に対気速度が増加し、ブレード上では音速を超える速度が生じて衝撃波が発生し抵抗が急増する。 従って、ローターを回転させるために必要なパワー(形状抗力パワー)は、後退側での失速による抵抗増大と相まって急増する。
限界速度
後退側ブレードでは、ほぼ全面が失速と逆流領域になって、揚力を発生させる事はほとんどできなくなる。 そのため、前進側でもバランス上揚力を発生できないので、揚力を発生しているのは回転面の前方と後方のみとなる。 しかし、なおも速度が増加すると、これらの部分も失速が始まり、ローターはもはやヘリコプターを飛行させるだけの推力を発生できなくなる。 これがヘリコプターの速度限界であり、400km/h付近と見られている。
現実的な最高速度
飛行状態では、失速と衝撃波のため形状抗力パワーも非常に大きなものとなり、ローターの効率は低下する。 また、大きな出力を必要とするので、エンジンとトランスミッションも大きく、重くなるなど、ヘリコプターとしての効率も低下する。 従って現在用いられているヘリコプターの最高速度は、経済性、現実性の観点から300km/h程度であるものが多い。

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降下と着陸進入
水平飛行から降下への移行
水平飛行から降下へ移るのは、単に巡航高度を低高度に変更する場合と、引続き進入着陸を意図する場合がある。 巡航高度を変更するだけの目的で降下する場合は、巡航速度を維持したまま降下するが、降下に引き続いて着陸を意図する場合は、着陸進入に適した降下速度にあらかじめ減速しながら降下に移る。
操作手順としては、まずCPレバーを下げて、機体に所望の降下率を与える。 この時右ラダーペダルを踏んで(メインローターが上方からみて反時計方向回転の場合)、機体を横滑りさせないように操作しながら、サイクリック・スティックで所望の降下速度に調整をする。
一般にシングルロータのヘリコプタでは、CPを下げると機首が下がり、上げると機首が上がる傾向がある。 従って、降下飛行に移行する場合は、機首下げによって速度が増えやすいので速度保持に注意しなければならない。
最終進入から着陸
着陸進入の形態には大別して次の3種類があり、着陸場所の地形や、離着陸機の混雑度を考慮してパイロットの判断で使い分けられる。
通常進入、高速進入、低速急角度進入
最終進入とは、着陸に対して最終的に着陸点に正対して直線進入降下飛行をいう。 着陸スポットに確実に到達するために、自ら設定した経路、進入角を外れないように特に正確な操縦操作が要求される。

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通常着陸進入
通常進入は、速度VY(最良上昇速度)、進入角6〜7°で開始する。 正確な進入角に乗って降下した場合、対地高度150フィート(約50メートル)から着陸に備えて減速操作を始める。
減速降下中の速度と高度の関係は、そのヘリコプタの飛行規程に示されているH-V線図(高度-速度包囲線図 Height-Velocity Envelope)を考慮した諸元に従って操縦しなければならない。
VY以下に減速すると、減速につれて沈下が大きくなるので、CPを操作して進入角を保つ。 着陸スポット上にホバリングするため一定の減速率で減速を続けるが、一般的に速度計は極低速(約20ノット以下)では信頼性に欠けるため、地面の流れなど、目視感覚で速度処理をしながらスポット上に、対地高度1〜3メートルでホバリングし着陸進入を終了する。
高速進入着陸
飛行場のような障害物のない広い場所で、後続の進入機に早く進入コースを開放するなど、必要に応じて使用される進入方法である。 速度約100ノットで、通常進入よりやや浅い4〜5°の進入角で最終進入経路に入る。
対地高度150フィート(約50メートル)まで速度約100ノットを維持し、そこから急減速動作に入り着陸スポット上にホバリングする進入方法で、急減速過程では、減速のための機首上げ操作により、機体が上昇しないようにCPレバーを大きく下げなければならない。 そして、次にホバリングに移るためCPレバーを大きく上げる操作が必要になる。
このため、ラダーペダルの操作もCPレバーの操作に合わせて、減速過程では大きく右ラダーを踏み、ホバリングに移行する時には、大きく左ラダーを踏んで機首方位を保たなければならない。
このように高速進入から急減速停止するために、機体姿勢が大きく変化する事になり、サイクリック・スティック操作による機体の動き(上昇または沈下)を見て、進入角と機首方位を維持するため、CPとラダーペダルの操作の切り替えのタイミングと操舵量を瞬間的に判断して、素早い操作が求められる。
セフレとの出会いがはじまり、そして今に至ります。
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